研究開発トップが語る
![[写真]「市場が求めるもの」を作り出していくために、R&Dのすべての力を結集する 富士フイルムホールディングス 取締役 執行役員技術経営部長 兼 富士フイルム 取締役 常務執行役員 R&D統括本部長 井上伸昭](pack/images/message_mainvisual_01.jpg)
新たな価値の創造によるイノベーションを実現
—富士フイルムグループが将来にわたって成長していくための注力分野とは
銀塩写真をベースに培ってきた富士フイルムグループの技術は幅広い可能性を持っています。これらを生かしつつ、よりスピーディーに、新たな価値の創造によるイノベーションを実現することを目指して、以下の3分野を中心に、成長戦略を推進しています。
まず、写真、印刷およびドキュメントなどに代表されるイメージング&プリンティング分野では、デジタル化・IT化の進展により、技術およびビジネスの内容が大きく変わってきています。引き続き、高付加価値商品・サービスを提供するために、事業部と一体となって研究開発を進めています。この分野では富士フイルムと富士ゼロックスの緊密な連携も不可欠です。すでに協働が進んでいますが、今後は質・量ともにさらに強化していきます。
次に、将来の中核事業と位置づけているヘルスケア分野ですが、こちらは医薬品や化粧品・サプリメントを中心に、長期的な視野でマーケティングと研究開発に取り組んでいくことが必要です。経営資源を投入し、基盤整備を着実に進めています。2009年に設立した「医薬品研究所」では、富士フイルムが写真分野で蓄積した化合物ライブラリーの活用、独自のシミュレーションおよび解析技術を駆使して新薬の開発に取り組んでいます。X線、内視鏡などの診断分野については、さらなる開発力強化のため、複数の組織に分散していた技術者を集約し、「メディカルシステム開発センター」を新設しました。今後は機器開発に加え、ソフトや画像処理の技術がますます重要になってきます。
そして、より強化を進めているのが高機能材料分野。この分野では、銀塩写真の基盤である有機素材・フレキシブルベース・薄膜塗布技術を徹底的に追求し、フラットパネルディスプレイ(FPD)材料に続く有力製品の開発に注力しています。
市場が求めるものを「狙って作り出す」
—FPD材料に次ぐ新製品・新規事業の創出にあたっての具体的な施策とは
新規事業を起こし、育成・支援する、インキュベーション機能のさらなる強化に取り組んでいます。例えば2009年4月に、エレクトロニクス マテリアルズ事業部、産業機材部、化成品事業部を統合して誕生した産業機材事業部は、高機能材料分野の拡大と新規事業化を担う部門。この産業機材事業部とR&D統括本部 先端コア技術研究所、有機合成化学研究所および生産技術センターとの連携を強化し、機能性材料の商品企画、R&Dから生産、そして市場導入まで、一連のプロセスをスピードアップさせる土台を整えました。
写真フイルムをはじめとする従来の主力製品では、原材料から最終製品までを社内で研究・開発・生産する、典型的な垂直統合型モデルでビジネスを展開してきました。しかし、「フジタック」などに代表される液晶用材料は、最終製品であるFPDの基幹部材であり、FPDメーカーとの緊密な連携が必須です。高機能材料分野では、自社の技術を早い段階から開示し、他社と協働して、最終商品完成に向けて技術のレベルを上げていくオープンイノベーションが、ますます重要になります。インキュベーション機能を強化し、「市場が必要としているものを理解し、タイムリーに応えていくこと」が必要です。
また、R&Dの現場では、研究所間で必要に応じて、柔軟に横の連携が図れる組織運営が不可欠です。有機合成化学研究所と先端コア技術研究所、生産技術センターの連携を強化するとともに、研究所長会議などで全社のR&D課題を共有し、目標に向かって組織の枠組みを越えて、全体最適を追求しています。
研究の基盤を自ら作り上げる覚悟が必要
—R&Dの効率化・迅速化や、新規事業の創出に挑む、現場の研究者・技術者に必要なことは
効率化・迅速化に特効薬はありません。しっかりした作業仮説を立て、実験結果をしっかり見つめ、次の実験を計画、実行、検証する「PDCA」サイクルを回していくことがR&Dの基本です。特に、研究初期の段階にネガティブな兆候を見逃したり、実験結果を都合よく解釈して進めると、膨大な時間を費やした後に元に戻ってしまう。これは大変非効率です。決して一人よがりになることなく、複数の視点でチェックしていくことが必要でしょう。富士フイルムではR&Dの合理的なテーマ遂行を目指して「富士フイルムステージゲートプロセス」を定めており、各ゲートにおいて意思決定のための情報の精度を上げて商品開発を進めています。
「研究の現場力」の源は人。特に、人材育成の観点で上長の役割が重要です。しっかり指導できる上長に恵まれるかどうかで、部下の会社人生が左右されます。上長は、挑戦する場や機会を積極的に与え、やらせるだけでなく、実験データや研究方針に関する議論などを継続的に行い、部下の成長に貢献し、自らも成長する機会にすることです。質の高い人材を継続的に育てていくことが、成長の源です。
また、新規分野には、当然のことですが、技術蓄積の少ない領域があり、担当の研究者は、実験手法、評価方法など、自ら構築していく覚悟が必要です。さまざまなことに幅広く関心を持ち、自ら動くことが求められます。
—研究開発に携わるものとして
企業における研究は、会社の成長につながるような新しい価値を世の中に提供することによって、初めて意味のあるものになります。新製品の開発には多くの生みの苦しみがありますが、予想を超えた現象への遭遇、発見、困難を克服したときの満足感、さらにはお客さまからの感謝のフィードバックなどは、研究者冥利につきます。富士フイルムグループが持つ幅広い研究領域や豊富な知見・人材など、恵まれた環境の中で、大きく羽ばたいて欲しいと思います。
また、R&Dはチームプレーです。私自身も若いころは、「自分ひとりで何でもできる。応援をもらうのは屈辱だ」と気負っていましたが、散々苦心した課題が同僚の援助でスムーズに解決できた経験があります。それ以来、「苦しいときほどオープンになり、周囲のアドバイスを得よう」と心掛けてきました。
最後になりますが、新しい商品は、研究所の力だけで、生まれるわけではありません。マーケティング、生産、販売といった社内の全部門が、力を合わせて取り組むべきものです。どのような商品形態でビジネスを行うのか、いわゆるビジネスモデルを定めることが必須です。その意味で縦・横の連携など、全社のチームワークも大切。グループの総力を挙げて、新製品を次々と生み出したいですね。
富士フイルムグループは、独自の技術で人々に感動や喜びを与え、さらには生活の質向上へ貢献し続けてきました。これまで多くの先輩たちが培ってきた有形・無形の伝統と財産、そして誇りを大切にしながら、新しい富士フイルムグループを築くべく、力を合わせて挑戦していきます。
![[図]富士フイルムグループのR&D戦略 概念図](pack/images/message_img_01.jpg)




