COOインタビュー

[写真]代表取締役社長・COO 助野健児

Q1 中期経営計画「VISION2019」の進捗状況について2017年度の振り返りとともに教えてください。

当社は現在、2019年度を最終年度とする中期経営計画「VISION2019」の達成に向けてグループ全体で事業活動に取り組んでいます。「VISION2019」では、各事業を「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つのステージに位置付け、メリハリのある経営資源配分を行うことで売上・利益を拡大し、グループ全体での確実な成長を目指しています。中でも、「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長の強化」と「ドキュメント事業の抜本的強化」を重点課題としています。


中期経営計画「VISION2019」の初年度である2017年度は、電子映像事業やメディカルシステム事業、電子材料事業などで売上を伸ばし、連結売上高は、前年度比4.8%増の2兆4,334億円、営業利益は、ドキュメント事業における体質強化を目的とした構造改革費用などの一時費用700億円を計上したため前年度比24.1%減の1,307億円、一時費用を除いたオペレーションベースでは、前年度比13.8%増の2,007億円となりました。当社株主帰属当期純利益は、1,407億円と過去最高益を達成しています。イメージング ソリューションとヘルスケア&マテリアルズ ソリューションではともに増収・増益を達成。ドキュメント ソリューションも厳しい市場環境の中、オペレーションベースでは増益を達成しました。各事業分野で「VISION2019」に基づいた戦略を着実に実行し、順調なスタートを切ることができました。


2018年度の業績は、計画に対し順調に進捗しています。イメージング ソリューションは、チェキの目標販売台数を900万台から1,000万台に引き上げるなど、好調に推移しています。ヘルスケア&マテリアルズ ソリューションは、引き続きメディカルシステム事業や電子材料事業が好調です。積極的に投資を行うことで、バイオCDMO事業などの成長分野の事業成長を加速するとともに、医薬品や再生医療事業など、将来を支える事業の基盤を整え、早期の利益創出につなげていきます。ドキュメント ソリューションは、構造改革をはじめとする抜本的強化を順調に進めています。これらの施策を確実に実行することで、最終年度である2019年度には、過去最高の営業利益2,300億円および当社株主帰属当期純利益1,500億円を実現させます。

また、株主還元については、2019年度までの3年間で、配当1,000億円、自己株式の購入2,000億円の計3,000億円を計画しています。自己株式の購入に関しては、2017年度に500億円を実施し、2018年8月から1,000億円の購入をスタートしました。各事業で資本コストを上回る収益性を追求し、成長投資と株主還元をバランスよく実現する資本政策を推進することで、株主資本利益率(ROE)を2019年度に7.3%、そして2020年度には8%まで引き上げていきます。

Q2 コーポレート・ガバナンスの強化について進捗を教えてください。

2017年の富士ゼロックスの一部の海外販売子会社で出来した不適切会計処理問題では、皆さまに大変ご心配をおかけいたしました。当社は、事業戦略を推進するための基盤であるガバナンスの強化を重要な課題と位置付け、グループ全体でガバナンス強化に取り組んでいます。スピード感を持ってガバナンスを強化するにあたり、私を委員長とするガバナンス強化委員会を設置し、「グループ会社管理」「経理」「監査」「コンプライアンス」そして「ITガバナンス」の5つの領域を強化するプロジェクトを立ち上げました。富士フイルム、富士ゼロックスの財務会計機能を富士フイルムホールディングスの経理部に統合。また、グループ全体の監査機能の強化を目的にグローバル監査部を設置するなど、組織や仕組みを整えています。また、22言語に対応した内部通報窓口「富士フイルムホールディングスホットライン」も設置しました。従来もグループ各社・各地域で通報窓口はありましたが、富士フイルムホールディングスとして、組織における不正や法令違反につながる兆しを早期に発見・対応していきます。さらに、当社がビジョンとして掲げてきた「オープン、フェア、クリア」の精神を改めて徹底するため、国内外の全グループ会社従業員に対してコンプライアンス教育を実施するとともに、われわれ経営層も繰り返しコンプライアンスに関するメッセージを発信しています。

2017年末に実施した意識調査では、90%以上の従業員がこの精神を理解しているという結果でした。こうした取り組みにゴールはありません。今後も継続的にガバナンス強化とコンプライアンスの徹底を図り、皆さまの信頼に応え続けられるよう取り組んでいきます。

さらに、コーポレート・ガバナンスの充実と取締役会のダイバーシティ確保のため、2018年6月28日の株主総会にて、独立社外取締役に、新たに江田麻季子氏を迎え、取締役10名のうち、4名が社外取締役となりました。江田氏は、当社にとって初の女性社外取締役です。企業経営の経験や豊富な国際経験を生かして、取締役会での議論に積極的に関与していただきたいと思います。そして、独立社外取締役を委員長とした、任意の指名報酬委員会を設置し、社外役員が過半数を占める委員会で、CEOのサクセッションプランおよび取締役の報酬に関する方針や基準等の討議を行っていきます。これらの取り組みにより、経営のさらなる透明性の向上を図っていきます。

Q3 重点事業領域であるヘルスケア分野における成長戦略とその進捗について教えてください。

当社は、創業間もない1936年にX線フィルムからスタートした「診断」領域に加え、化粧品やサプリメントなどの「予防」領域、そして医薬品・再生医療などの「治療」領域までをカバーする「トータルヘルスケアカンパニー」を目指して事業拡大を進めています。中期経営計画「VISION2019」でも、ヘルスケア分野での成長加速を大きな課題と位置付けています。

現在好調なメディカルシステム事業、バイオCDMO事業をさらに強化・成長させるとともに、医薬品、再生医療事業に必要な投資を行いながらも、効率的な研究・開発を行うことで黒字化を目指し、今後の主力事業として大きく成長させていきます。

メディカルシステム事業は、X線画像診断装置、内視鏡、超音波診断装置、体外診断(IVD)システムなど、他社にない幅広いラインアップ、そして、競争優位性の高い医療ITを核とした総合的なソリューション提案を強化しています。また、2018年1月に、サウジアラビアで初となる女性健診センターの設立について協力を進めていくことを同国と合意し、覚書を締結するなど、同国における女性の健康を守るという社会課題に対して、国家プロジェクトを通じたビジネスを積極的に進めています。さらに、同年5月には、ロシア有数の製薬企業「R-PHARM」グループと、ロシアにおける医療機器、サプリメントの販売契約を締結しました。医療サービスの充実・高度化など、ロシアのヘルスケア領域における課題解決に貢献していきます。

成長の著しい新興国において、現地のニーズに合った製品・サービスを提供することにより社会課題の解決と同時にビジネスの拡大を図っていきます。こうした取り組みにより、メディカルシステム事業全体で収益性を向上させ、年率7%の売上成長を目指します。

医薬品事業の中でもバイオ医薬品は、副作用が少なく、高い効果が期待できることから市場が大きく拡大しています。当社は、高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出・精製に至るプロセスの管理ノウハウなどを持つFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesを中核に、写真フィルムの開発・製造で培った一定条件製造技術や品質管理技術を投入することで高効率・高生産性の技術の開発を進め、積極的に設備投資を行い、成長を加速させていきます。

そして、新薬開発においては、「アンメットメディカルニーズ(いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)」が高いアルツハイマーやがんなどの領域にテーマを絞り、効率的に研究・開発に取り組んでいきます。また、必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングで送達するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)領域で、当社の技術を活用した製剤化技術の実用化を進めています。一例を挙げますと、2018年5月に、進行性の固形がんを対象とした「FF-10832」の臨床第Ⅰ相試験を米国にて開始しました。これは、富士フイルムが写真フィルムなどで培った、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを生かして、既存の水溶性薬剤である抗がん剤「ゲムシタビン」*をリポソームに内包したリポソーム製剤です。「FF-10832」は、薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して、薬効を高めることができると期待されています。

当社は、DDSの領域で、このリポソーム製剤技術やマイクロニードルアレイを、既存薬のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品や遺伝子治療薬へ応用展開していきます。

また、2018年7月には、低分子医薬品の研究・開発・製造・販売を担う富山化学工業を富士フイルムの完全子会社とするとともに、同年10月に同社と放射性医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富士フイルムRIファーマを統合し、富士フイルム富山化学としてスタートさせることを決定しました。市場環境が厳しさを増す低分子医薬品の分野においては、診断薬・治療薬の新薬開発のスピードアップ、「診断」と「治療」の連携強化をより一層図っていきます。

再生医療事業では、「未来を創る投資」として積極的に経営資源を投入しています。2018年6月に細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Companyおよびアイエスジャパンを連結子会社化しました。

再生医療における重要な3要素である、「細胞」「培地」「足場材」のすべてをグループ内に保有し、一体で開発できる体制をさらに強化するとともに、高い成長が見込まれる培地事業において、事業成長の加速を図ります。

また、日本初の再生医療等製品を上市したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングや、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics、「培地/サイトカイン」に関して高い技術を持つ総合試薬メーカーの富士フイルム和光純薬などのグループ会社とのシナジーを最大限に発揮し、再生医療分野の研究開発をさらに加速させていきます。

これらの施策を積極的に展開しながら、2019年度には、医薬品・バイオCDMO、再生医療の領域を合わせて黒字化を目指しており、へルスケア領域として、2019年度には売上高5,000億円、営業利益400億円を目指します。

* 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬であり、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている

Q4 ドキュメント事業に関する成長戦略と今後の展望について教えてください。

「VISION2019」において、ドキュメント事業は、厳しい競争環境でも利益を確保できる体質への強化を課題としています。

まずは、抜本的な構造改革をやり抜くことで、収益と生産性を改善し、強靭な企業体質へと変革していきます。本取り組みは順調に進捗しており、国内外合わせて10,000人の人員削減を含むコスト削減効果は、対2016年度で、2018年度270億円、2019年度以降年間550億円を見込んでいます。

さらに、採算性を重視し、ローエンドプリンタービジネスなどの低採算商談の縮小を進めています。2018年度第1四半期については、この影響により前年同期と比較して売上高は減少したものの利益は改善しました。

今後の事業成長については、2018年3月に発表した新たな価値提供戦略「Smart Work Innovation」のもと、富士ゼロックス独自のAI 技術やIoT 、IoH(Internet of Human)を活用し、お客さまの業種・業務の特性に合った新たなソリューション・サービスを提供することで、お客さまの生産性の向上、競争力強化を支援していきます。

これらの取り組みにより、ドキュメント事業の営業利益率10%の達成期限を、中期経営計画で当初設定した2020年度から1年前倒しし、2019年度での達成を目指してまいります。

なお、2018年1月31日にゼロックスコーポレーションとの間で、富士ゼロックスとゼロックスコーポレーションとの経営統合および統合後の会社の株式の過半となる50.1%取得について合意したことを発表しました。しかし、これに反対するゼロックスコーポレーションの一部の株主から提訴があり、ニューヨーク州裁判所から差し止めの仮処分が下されました。当社では富士ゼロックスの抜本的な事業強化を進めており、ゼロックスコーポレーションとの統合はベターではありますが、マストではありません。1月に発表したスキームによる経営統合案が両社および両社の株主にとって最善であるとの当社の考えは変わらないため、裁判でもその妥当性と正当性を丁寧にしっかりと訴えていきます。

Q5 ステークホルダーの皆さまへのメッセージをお願いします。

富士フイルムグループは、幅広い事業領域でビジネスを展開する中で、各事業の状況に合わせた施策を適切に展開することにより、さらに強固なポートフォリオを形成し、事業成長を加速させ、イノベーションで人々の生活の質の向上につながる製品やサービスを生み出し続けていきます。株主の皆さまにおかれましては、より強く、よりスピーディーにビジネスを展開し、成長し続ける富士フイルムグループに対しご期待いただくとともに、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。


中期経営計画「VISION2019」

「VISION2019」は、各事業を、それぞれの成長段階に合わせ「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つのステージに位置付け、各事業のステージを明確化し、「各事業の収益力の向上によるキャッシュの安定的創出」「主要事業の成長加速による売上・利益の拡大」「未来の柱となる収益貢献事業の育成」を推進することで、戦略的飛躍へとつなげていきます。また、海外販売基盤を強固にし、ヘルスケア製品や新規高機能材料などを積極的に海外展開します。
株主還元については、2019年度までの3年間で3,000億円(配当1,000億円、自己株式の購入2,000億円)を計画しています。これらにより、2019年度に売上高2兆6,000億円、営業利益2,300億円、ROEの7.3%を達成します。これに加え、戦略的なM&A投資により、本中期計画を超える成長を実現します。