CSR活動報告│健康

【重点課題2】医療サービスへのアクセス向上

医療IT分野におけるAI/IoTの活用

富士フイルムグループは2018年4月、医療画像診断支援、医療現場のワークフロー支援、医療機器の保守サービスまで活用できるAI技術の開発を進め、これらの領域で活用できるAI技術を、“REiLI(レイリ)”というブランドで展開していくことを発表しました。

AI技術に本腰を入れて取り組む富士フイルムグループの姿勢は、多くの医療関係者にも反響・共感を呼び、学会や研究発表会などでのAI技術の講演依頼が増えています。また、京都大学と間質性肺炎の診断技術の共同開発に成功、大阪大学や米インディアナ大学医学部とも共同研究を開始しました。大阪大学には「人工知能画像診断学共同研究講座」を開設、より高度なAI技術の開発を行い、その実用化を目指します。順天堂大学が2019年7月にスタートした、新たな医療技術の早期実用化を目指すオープンイノベーションプログラム「GAUDI Global Alliance Under the Dynamic Innovation)」にも民間企業として参画。大学病院としては病床数、患者数、国内トップクラスを誇る順天堂大学の臨床実績をベースに、医師や現場スタッフとともに総合的な医療AIの技術開発を行っていく予定です。2019年7月には、“REiLI”として、CT画像からの臓器自動抽出や骨の経時変化表示など、AI技術を活用した画像診断ワークフロー支援を実現するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer (シナプス サイ ビューワ)」を発売しました。AI技術によって医師の作業を効率化し、本来時間を当てるべき診断の時間を最大化するために、国内外のアカデミアと共創し、ソリューションの社会実装を加速していきます。

新興国の医療環境改善への取り組み

世界各地、特にアフリカやアジアなどの新興国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)*1 の達成は、SDGsでも掲げられている国際的な目標です。国民皆保険制度により日本はUHC模範国とされており、富士フイルムグループはその日本で培ったノウハウを生かし、新興国の医療技術向上、人材育成、検診習慣の普及等のサポートを行ってきました。

2018年度は、2017年度から実施してきたブラジル「遠隔画像診断技術を活用した医療連携普及促進事業」を継続実施。また各地で開催してきた「マンモグラフィー教育セミナー」を、南アフリカで初めて実施したほか、ミャンマー、キルギスなどでは内視鏡検査に関するワークショップを開催、医師や検査技師の技術指導、養成を積極的に行っています。また、2016年からFINDと共同開発を行っている、尿を検体として用いるHIV感染者の結核を検査するための高感度・迅速診断キット「TB-LAM」については、2018年から南アフリカで臨床評価を開始し、エビデンスを積み重ねています。今後は開発途上国での採用に不可欠な世界保健機関(WHO)の早期推奨取得に向けて、CEマーク(欧州整合規格)の取得と開発途上国での臨床を加速していきます。

なお富士フイルムグループは、2019年8月に横浜で開催された「第7回 アフリカ開発会議2019(TICAD7)」に出展、アフリカで進める医療への取り組みを紹介しました。また、公式サイドイベントにも登壇したほか、フジフイルム スクエアでは記念写真展を開催するなど、さまざまな面からTICAD7の成功に向け協力しました。

  • *1 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態

【TICAD7への参加】

出展ブースでは、JICAとケニアで開始した超音波画像診断装置による妊産婦死亡率低減への取り組み(左)、結核を検査するための高感度・迅速診断キット「TB-LAM」の診断性能(右)などを紹介

アフリカで課題とされる結核や乳がんなどに関連するヘルスケア製品を展示

公式サイドイベント「「UHC推進への協業:顧みられない病気のための医療技術イノベーションとアクセス促進」に登壇

フジフイルム スクエアでは開催記念写真展として「アフリカ、胎動する大陸」(主催:世界銀行グループ)を開催。写真はオープニングレセプション